レポート

Cultural Festival vol.0 Report

開催概要|ABOUT

退屈を持て余すあらゆる人々に生活遊芸を分配する
NEW THIRD “Cultural Festival vol.0”

日程:2023年11月5日(日)
   第一部 10:00〜16:00、第二部 17:00〜20:00
場所:立正佼成会豊田教会|東京都日野市多摩平1-13
主催:本村拓人(NEW THIRD / 株式会社tact 代表)

 

出店者|CAST

[food]
・ヤマモ味噌醤油醸造元(秋田 / Viamver®︎酵母の発酵料理)
・味坊集団(神田 / マトン串焼き、マトン焼きそば)
・bistro caravin × SUMIBI FRENCH SINQ(静岡 / 黒毛和牛のカレー、濃厚エビパスタ)
・Amazing Catering(東松山 / フランクソーセージ、バインミー、フルーツサンド)
・grege(八王子 / ワイン、クレープ)

[drink]
・匣_haco(盛岡 / ナチュラルワイン)
・BAR? BIG HUG(金沢 / ビール、ウイスキー)
・cafe かいめんこや(宮城栗原 / コーヒー)

[merchandise]
・3rd book company(本の贈与)
・MINIMAL MAAT(自由が丘 / ブラウニー、ラテ、ココア、ヘアカット)
・ヤマイリコーヒー(八王子 / 自家焙煎コーヒー豆販売、焙煎体験)
・breffee STORE(静岡 / ピタパン作り体験)
・装花TOKYO(花とナプキンのテーブルコーディネート体験)

[TOYODA locals]
・認定NPO法人やまぼうし スローワールドおちかわ屋(野菜販売、たい焼き)
・BEER STAND TOYODA(TOYODA BEER、豊田セゾン)
・ミリー洋菓子店(焼き菓子)
・廣屋 居酒屋(BBQサポート)
・CLAMPWOODS COFFEE FACTORY(角打ちサポート)
・酒処 harimasa -酒マサ(おでん、熱燗)
・珈琲焙煎庵 和樂(コーヒー、カフェオレ)

[for kids]
・IKIRU(おえかきワークショップ)
・NPO法人Class for Everyone(移動図書館)

 

協力者|STAFF

・酒井拓磨(会場設計・什器設営、DJ)
・並木大典(DJ)
・夏井俊吾(選曲)
・大橋錬太郎(コーディネート、運営サポート)
・菅原結衣(記録動画)
・酒井一途(アーカイブレポート、記録写真、運営サポート)
・本間菫子、森あんじゅ(当日運営サポート)
・立正佼成会(会場提供、運営サポート)

 

開催レポート|REPORT

限りある余暇をいかにして過ごすかは、豊かに人生を生きる上で重要な問いです。

せわしない日々にあってのたまの休日、あるいは不意に訪れるちょっとしたスキマ時間。没頭できる趣味のひとつでもあればよいですが、ただなんとなくやり過ごしてしまって、「もっと有用な時間の使い方をすればよかった」と後から思うことの多いこと。

家の雑事をこなすこと、SNSを眺めること、動画やテレビをみること。どれもすでに日常に組み込まれている必要な過ごし方です。しかしそれらの時間が積み重なったとき、いつの間にか余暇は終わっていて、しかも有用な時間の使い方ではなかったと思ってしまう。

ではいったい有用な時間とは? 余暇の楽しみ方とは?

無数に楽しみの選択肢はあるのです。ありすぎて何を選べばいいのか、もはや自分の意思ではなく、商品やコンテンツのマーケティングによって私たちの消費が左右されていることに向き合わなければなりません。私たちは自分が何を欲しているのかがわからない。

つまるところ、現代人は退屈しているのです。ありあまる楽しみの選択肢に。

 

NEW THIRD “Cultural Festival”は私たちの退屈に立ち向かう、いくつかのコンテクスト(文脈)を生み出すための実験的かつ実践的な試みです。

とことんローカル=開催する地域とそこに暮らす人々を対象として、地域で愛される店を招き集い、また厳選・洗練された趣味人たちを全国から招聘し、ローカルのコミュニティに混ぜあわせます。

各地に潜在する可能性を秘めた土地・施設を会場とすることで、新しいサード:NEW THIRDを生じさせ、その地域に住まう人々の暮らしと余暇のありかたを文化的にリクリエーション(再-創造)します。

 

NEW THIRD “Cultural Festival”の第1回「vol.0」は東京の多摩エリアにある日野市豊田にて開催されました。

チラシ表面は黒抜きで英字、正直内容のよくわからないスタイリッシュな広報物。「立正佼成会 豊田教会」という会場。そこは法華経を中心とした在家仏教の宗教施設であり、ローカルの人々も普段決して足を踏み入れることがありません。

活用されているとは言いがたいその広大な土地を、地域にひらくための取組みの一貫としての会場提供の協力を得て、宗教とは関わりなく NEW THIRD の舞台ができました。

一見どころか、何度見返したとしても足を踏み入れづらいその姿は、実のところ退屈な日常に飽き飽きしている人びとを寄せつけるための装置でしかありません。

装置に惹かれた人びとが非日常を求めて NEW THIRD に立ち寄って、実際にその中身にふれてみると、そこにはじつにさまざまな仕掛けがささやかに施されています。

たとえば #3rdFriend と名づけられた仕掛けでは「赤の他人以上友達未満の最もヘルシーな人間関係」が生まれやすいように、気兼ねない初対面での会話ができる環境づくりを、その場に設計しています。

ふと立ち寄ったどこかで、たまたま出会った誰かとの何気ない対話が、日常を変えるような新しい視点をもたらすことがあります。家庭の横軸、仕事の縦軸をつらぬく「ナナメの関係性」として、無責任だからこそ思い切ったアドバイスができることがあるのです。

後腐れのない贈与の関係が最も成り立ちやすいヘルシーな関係がそこには生まれます。

また、#3rdRole と名づけられた仕掛けでは、「みずからに与える本当に演じたい私の役」が湧き起こるようにさまざまなワークショップが用意されています。

家でも社会でも人には割り当てられた役割があって、人は意図せず自分の役を振る舞いながら生きています。けれど人生は家や社会のなかだけにあるものではなく、自分の役と出番を自分で作りだすこともできるはずです。自分のまだ見ぬ可能性に出会いにいくため、遊ぶように体験することが「わたし」の欲求に出会わせるのです。

ほかにも、そんな仕掛けがあちこちに用意されています。

集客や売上だけを目的にするのなら都心部や注目を集めやすい会場で開催すればよく、また数ある休日のイベントの選択肢を一つ増やすということも目的ではありえません。

コンテンツが溢れかえっているこの時代において「数」は求める対象にはなりえず、成功の基準もそこにはありません。知る人は知っている選りすぐりの出店者たちを招いているので、イベントとしての話題性を広めるのであればいくらでも方法はあるのです。

では NEW THIRD は何をめざすのか。

私たちはそこに集う人々同士、また“THIRD THING / 生活遊芸”と呼ばれる遊びや表現、趣味との「出会いかた」、そしてその「深さ」を重視しています。とことんローカル=開催する特定の地域とそこに暮らす人々を対象として開催するのもその目的に結びついています。

 

東京都心のベッドタウンとして知られる日野・豊田。中央線に乗れば、10分以内で立川にも八王子にも行くことができ、また新宿や東京駅へも直通でアクセスできる利便のよい立地です。しかし子連れの家族(とくにベビーカーを使っての移動)、体力の衰えた高齢者にとってはしばしば満員となる電車に乗ることも一苦労。

東京で注目を集めるイベントは画期的なプロモーションによって、あらゆる場所から大勢の客が集まり、出店ブースに数十分並んでようやく食事や飲み物を手にできる状態です。たしかにそのようなイベントでは場の盛り上がりは感じられるかもしれない。店の売上は上がるかもしれない。けれど休日にまで人混みに溢れかえった場所で、疲れ切って時間をすごすことは本当に心が求めていることなのか。

すくなくとも NEW THIRD に施された #3rdFriend#3rdRole などの仕掛けは、そのような形では機能せず、叶えられません。

非日常の仮の姿をして NEW THIRD はローカルに唐突に現れ、日常では立ち入ったことのない土地であった立正佼成会 豊田教会がひらかれており好奇心がそそられます。

そこに人々はまるで公園にでも立ち寄るかのようにふらっと足を踏み入れてきます。心にも身体にも余裕をもてる、なにものをも負担やストレスに感じることのない場がそこにあることを感じられるからです。ベビーカーを押すにも広々と空間があり、子どもたちを安心して駆け回らせることができ、何も注文しなくても腰かけられる椅子があり、仮設の足場を登れば自分の住んでいる町がいつもと別様の形をしてみえてきます。

そうした環境による心の余裕があって初めて、新しい遊びや表現、趣味との「深さ」をもった「出会いかた」が、人々のあいだに偶発的に巻き起こるのです。

その出会いを通して、地域とそこに暮らす人々の日常そのものが変わっていくことが、 NEW THIRD のめざすところです。

 

いちど限りの開催ではもちろんそこまでの変化は望めません。数年にわたってたびたび開催されるなかで次第に地域に根づき、NEW THIRD の運営の主体が地域の人びとの手にわたっていくことがなによりも必要な展開です。

“THIRD THING / 生活遊芸”との「出会い」を経た人びとが、日常のなかでそれらを実践しはじめ、次のNEW THIRD “Cultural Festival”の開催時にはみずから出店者をサポートしはじめたり、いつしか出店者側に回っていく。

そうして地域とそこに暮らす人々のありようが変わっていくことで、 NEW THIRD の企みは完遂します。

今回のNEW THIRD “Cultural Festival”は、vol.0 としての実験的な開催でありながら、ついつい遊びは大きすぎる規模となり、おかげで課題も山積みとなってみえてきました。

広い敷地を回遊してもらう導線を引ききれなかったり、ワークショップを体験するための下準備が追いつききらなかったり。それでもすべてがあつらえられたものとして提供されるような場をつくりたいわけではないことが、むしろはっきりとみえてきました。

お金を払ってあとはそれを消費するだけ、というありかたを求めているのではないからこそ、みえてきた課題は今後の継続していく開催に向けての貴重なフィードバックです。

 

消費することに慣れている人びとがどのように自分で場をつくっていく側に回っていけるか、そのためのコミュニケーションデザインをしていけるかは、NEW THIRD のコンセプトの根幹に関わる課題です。

出店者たちそれぞれにもNEW THIRD “Cultural Festival”のCAST の一員として共に場を立ち上げていく心づもりを事前に共有しておく必要があります。

現場での偶発的な“THIRD THING / 生活遊芸”との「出会いかた」が生じるためにも、施された仕掛けが機能するようにさまざまな形でそのきっかけとなるトリガーを張り巡らせておかなければなりません。そうすれば自然と人びとの変容が生じていく場となっていくはずです。

 

 

今回呼びかけに応えて参加しにきてくれた出店者たちも、みな何がしかの“THIRD THING / 生活遊芸”を携えており、プロとしての仕事をする以上の遊び心をもって生きている人びとです。全出店者たちを写真および文章で紹介しながら、その全容を振り返ります。

匣_haco(盛岡 / ナチュラルワイン)

匣_haco(盛岡 / ナチュラルワイン)

ナチュール・自然派ワインとアパレル、コーヒーを取り扱う「趣味の店」と謳います。趣味といえどもすべてがこだわり抜かれた本物です。オーナーの伊藤洋子さんは盛岡の服飾学校を経て東京の大学、さらにそこから単身イタリアへ。独自の美学を追求するファッションブランド「C DIEM(カルペディエム)」の創業者マウリツィオ・アルティエリに見初められ、服飾のパターンの勉強を積みます。以来「今この瞬間を楽しむ」というコンセプトで、店舗経営をしつつ服づくりを行っています。実店舗で扱うコーヒーはイギリスのロースター集団「Dark Arts Coffee」のコーヒー豆を使用。盛岡の肴町商店街というローカルに海外からの本物を仕入れて取り入れる、それでいて質素なエレガンスさを振舞う美しさがあります。今回は選りすぐりのナチュラルワインをグラスで提供してくれました。

 

MINIMAL MAAT(自由が丘 / ブラウニー、ラテ、ココア、ヘアカット)

自由が丘に位置する「スクランブルサロン」と名付けられた複合型ショップ。美容室、カフェ、セレクトショップ、ワークショップスタジオなどが間仕切りなくシームレスにつながって店内に存在し、「じぶんの価値は じぶんでつくる」をコンセプトとしています。代表は旅するように働く美容師の丸山裕太さん。2021年OMC世界理容美容技術選手権大会アヴァンギャルド部門1位をもつ超実力派美容師です。同時に、カンボジアの孤児院を中心にボランティアカットを行い、NPO法人国際美容ボランティア協会代表理事としてアジア諸国での美容スクールや教育による雇用創出も行っています。今回はブラウニーやラテなどのカフェメニューのほか、青空の下でヘアスタイリングやカットも実現しました。

 

bistro caravin × SUMIBI FRENCH SINQ(静岡 / 黒毛和牛のカレー、濃厚エビパスタ)

bistro caravin × SUMIBI FRENCH SINQ(静岡 / 黒毛和牛のカレー、濃厚エビパスタ)

 

ヤマモ味噌醤油醸造元(秋田 / Viamver®︎酵母の発酵料理)

ヤマモ味噌醤油醸造元(秋田 / Viamver®︎酵母の発酵料理)

1867年、初代高橋茂助が秋田湯沢の地で味噌を作りはじめました。ヤマモの醸造所のもろみ蔵には百余年継がれる樽があり、蔵付き酵母をはじめとする菌の生態系と共存を続けています。基礎調味料である味噌と醤油は味の変わらないことが良しとされますが、ヤマモはそこに留まりません。十年間に及ぶ蔵付き酵母の研究開発の末に独自の酵母菌「Viamver®︎」の発見とその製法の確立をして特許を取得。魚介由来のうま味成分であるコハク酸の高い生成能力を持ち、無塩環境でも働ける特性を活かし、ナチュラルワインへの応用やジビエ料理の発酵に活用することでヤマモは次なる展開を目指しています。今回はヤマモ専属シェフの佐藤建徳さんが来訪。この酵母菌にて発酵させた食材や調味料を使った唯一無二のリゾット、スープ、サラダを提供されました。

 

味坊集団(神田 / マトン串焼き、マトン焼きそば)

味坊集団(神田 / マトン串焼き、マトン焼きそば)

 

Amazing Catering(東松山 / フランクソーセージ、バインミー、フルーツサンド)

Amazing Catering(東松山 / フランクソーセージ、バインミー、フルーツサンド)

 

cafe かいめんこや(宮城栗原 / 自家焙煎コーヒー)

cafe かいめんこや(宮城栗原 / 自家焙煎コーヒー)

宮城県栗原市六日町通り商店街にある、かつて薬屋であった空き店舗をリノベーションした cafe かいめんこや。昔は日用品を一挙に揃えるためにあった商店街の役割は、今では変わりつつあります。全国でシャッター街が増える中、六日町通り商店街では8年間で18店舗が新規出店。売っているもの以上に商店の店主に会うことを目的として、類が友を呼ぶように人がやってきます。自分のやりたいことをそれぞれがてんでばらばらにやっていて、それが集合体となったときに全体として商店街がおもしろくなる。店主の杉浦風ノ介さんはそんな思いのもと、移住者や新規出店の呼び込み、アーティスト・イン・レジデンスの運営など様々な企画を行ってきました。コーヒーを自家焙煎して提供するカフェの店舗としてのありかただけでなく、まちや地域に携わる多彩な顔をもっているということ。そんな風ノ介さんと会うことがなによりの目的となることも NEW THIRD の姿です。

 

breffe STORE(静岡 / ピタパン作り体験)

breffe STORE(静岡 / ピタパン作り体験)

多くの子ども連れが参加した手製のレンガ窯でのピタパン作り体験。静岡から現在店舗としては休業中のbreffe STOREの猪野絵里子さんと小野田彰徳さん夫妻によるワークショップです。炭火で窯を熱し、捏ねたピタパンをその窯にいれると、どんどん膨らんでいきます。上手に焼けたところで取り出して、中に具材を詰めたらできあがり。「パンを焼く」という一見ハードルの高そうなことが子どもでも手軽に体験できて、そのまますぐに食べられる。一連の流れでパンづくりにハマりこんでいくプロセスが用意されています。

 

NPO法人Class for Everyone(移動図書館)

NPO法人Class for Everyone(移動図書館)

2017年、和歌山県有田川町で使っていた移動図書館が、NPO法人Class for Everyoneに寄付されました。法人の拠点である相模原の地域の絵本作家さんで、『おふろやさん』など日本を代表する絵本を描かれてきた西村繁男さんに車体のペイントをお願いし、もう半面は地域の子どもたちとワークショップ形式でペイント。多くの人に絵本など寄付してもらって、完成したのがこの移動図書館です。どんなところでも居場所を作れる移動図書館が、 NEW THIRD にも登場しました。

 

IKIRU(おえかきワークショップ)

IKIRU(おえかきワークショップ)

2012年結成のミウルさんとミワコさん二人組のアートユニット。現在ミワコさんは大阪、ミウルさんは石川県小松市を拠点としてさまざまな場所で活動しています。ペイントしたり、布や糸を集めて縫ったり刺繍したり染めたりして、「絵を描く」だけでなく、フリーペーパーを作ったりご飯を作ったりもします。IKIRUの活動そのものが「生きる」作品です。今回は「生きるのおえかきワークショップ」を開催しました。みんなで自由に絵を描き、みんなでひとつの作品をつくります。絵を描くというよりも、じぶんのこころとからだと絵具であそぶ。みんなで描くことは、自分ひとりで作品をつくるのとはまた違って、出来上がりの作品は予測不可能。そんな時間や現象をたのしむワークショップとなりました。出来上がった作品は、第二部のディナーセッションにて飾られ、会場を彩りました。

 

装花TOKYO(花とナプキンのテーブルコーディネート体験)

フラワーデザイナーの杉山香林さんによる店舗を持たないアトリエスタイルのオートクチュール・フラワーブランド。命を持つ生花のみにこだわり、特別なシーンのフラワースタイリングをオーダーメイドで提供しています。今回は第二部のディナーセッションにもテーブルコーディネートとして使用する花とナプキンをその場でワークショップの形式で準備。共に作りあげていく場であったことが実感される時間でした。

 

grege(八王子 / ワイン、クレープ)

日野・豊田近隣の八王子からもお呼びしています。gregeは独創的かつ新たな”食”の楽しさを追求する創作レストラン。人が喜んでいる姿をみるのが好きで、なにより人を喜ばせることを大切にしているオーナーの小高直斗さん。そのモチベーションをもとに始めは東京ディズニーランドで働き、その後飲食店経営をめざしてパスタ屋の皿洗いからキャリアをスタート。やがてBeige Alain Ducasse Tokyoでソムリエをするに至り、当時ワインの監修で関わっていた店舗を「grege(グレージュ)」と名づけて経営することになります。宮城のワイン農場”Fattoria AL FIORE”の目黒浩敬さんが、ワインを通して沢山の人を幸せにしている姿に感銘を受け、その憧れから八王子でのワイナリー立ち上げを夢見ながら、今はまだ知らない誰かの喜びや幸せにまで手が届くようにワインと食と空間をつくっています。

直斗さんの NEW THIRD での動きかたは独特です。出店者でありながらもほぼブース内に留まらず(上記の1枚目の写真でも客側の位置に立っています)、会場内を誰よりも動き回って、誰に言われるでもなく来場者とコミュニケーションをとったり、写真を撮ってあげたり、ほかの店舗への呼びかけまで手伝っています。主体性のある関わりかた、というありがちな言葉にしてしまえばその存在の大切さは伝わりません。なによりも自分自身がいちばんに楽しむことを体現してくれていたように思います。

 

ヤマイリコーヒー(八王子 / 自家焙煎コーヒー豆)

八王子の山奥にある恩方地区に夫婦で住みながら、FUJI ROYALの焙煎機R101を構え、趣味を超えた本気の自家焙煎コーヒー豆を売り出すヤマイリコーヒー。原田修平さんは東工大でプラズマの研究をするも、同大学では珍しく院への進学をせずに塾講師として生きることを決め、やがて独立して原田塾を立ち上げます。教えることを天職としつつ、多彩な趣味(音楽 / 車 / サーフィン / スノーボード)で視野を広げ、自然発生的に人々と繋がっていく。そしてその繋がりからの学びがまた塾での子どもたちへの教えに結びつく。ヤマイリコーヒーではコーヒー豆の自家焙煎を行い、毎日のコーヒーが当たり前に美味しい日常に溶け込むスペシャリティコーヒーを提供しています。今回は当日豆を購入された方々に向けた、焙煎体験およびドリップコーヒー抽出のテク講座も行われました。

 

認定NPO法人やまぼうし スローワールドおちかわ屋(野菜、たい焼き)

日野・豊田ローカルからも店舗出店や会場運営のサポートを手伝っていただきました。障がいのある人たちを支援する様々な活動を行う認定NPO法人やまぼうし。日野市のまちの八百屋として、無農薬野菜やこだわりの自然食品をあつかう「スローワールド おちかわ屋」も運営しています。遊休農地を活用した農あるまちづくりへの障がい者参加事業、里山保全パートナーシップ協定の締結、就労支援事務所、食材加工場など、障がい区分に関係なく、多様な働き方と暮らしの支援をしながら、ともに豊かに生きられる地域での生活基盤づくりを行なっています。今回は野菜とたい焼きを販売しました。

 

CLAMPWOODS COFFEE FACTORY+酒処 harimasa -酒マサ(おでん、熱燗)

CLAMPWOODS COFFEE FACTORY+酒処 harimasa -酒マサ(おでん、熱燗)

 

ミリー洋菓子店(焼き菓子)

 

BEER STAND TOYODA(豊田 / TOYODA BEER、豊田セゾン)

多摩地区最古のビール工場がかつて日野にありました。明治に入って日本が近代化していく1886年のこと。時を経て2014年、ビール貯蔵所の後や製品ラベル、写真乾版が発掘されたのを機に、復刻プロジェクトが動き始めます。当時実行委員長を務めたのは増島清人さん(2枚目の写真左)。豊田駅前郵便局長であり豊田商店街理事でもある生粋の豊田ローカル。クラフトビール界隈のフランクな雰囲気を知っていくにつれ、増島さんはビールを通じて対話する「場」そのものへの価値を感じていきます。あらゆる地域がそうであるように豊田も例外ではなく、再開発の名の下にまちも人々のコミュニティも壊されてきました。80年代の活気ある商店街の姿を見てきた増島さんは、現代にふさわしい新たなローカルのありかたを模索していこうとしています。定番のTOYODA BEERに加えて、限定数販売の日野市産大麦100%使用した豊田セゾンも振る舞われました。

 

珈琲焙煎庵 和樂(コーヒー、カフェオレ)(写真左)

 

3rd book company(本の贈与)

会場提供の立正佼成会がサポートしてくれたこのブースでは、本が人から人へと巡っていくための 3rd book company が絵本や小説、さまざまな本を展示。そして興味をもった人びとに贈与されました。贈られたひとがまた次の機会にここの展示ブースに本を寄贈する、そうして巡っていく本の輪をつうじたコミュニケーションが巻き起こる場です。

 

会場での飲食やワークショップはすべて受付で購入できる金券を通じて販売されました。

 

会場にて収集したアンケートには、「普段入ることのできない施設に入れて嬉しかった」「普段来ない場所でのイベントが新鮮」「アットホームな雰囲気がとても良かったです」といったコメントが並びました。

より率直なコメントとしても、「宗教関連施設だったのでどんな感じかと思ったが、来てみると開放的で良かった」「安心して入ってみる事が出来ることは、良いことだと思う。今回のようなイベントとか、フリーマーケットとか、音楽イベントとか」との言葉。

地域に暮らす人々からしてみても、間近にあってもこれまで足を踏み入れたことのない土地・施設がひらかれたことそのものに意義があると感じられたようです。

 

また開催される機会があれば再訪したいという声も多くあがりました。「地域や人と人がつながるために良いと思います。また人と人だけでなく、人と自分が知らないモノや文化がつながることができればいいなと思います」と、ひらかれた場に対して「つながる」ことを求める思いがアンケートに書かれていたことも大事なポイントでした。

 

酒井拓磨(会場設計・什器設営、DJ)

 

夏井俊吾(選曲)+並木大典(DJ)

 

第二部は招待制・事前予約制のディナーセッションとして、会場中央に据えられたロングテーブルに席次もなくその場の出会いと直感によって心の赴くままに着席します。

お呼びした面々は日野・豊田のまちのこれからを担っていく方々。日野青年会議所や出店くださった地域の店舗の方々にもご参加いただきました。総勢50名の着席する夜のロングテーブルは圧巻です。

単発で打ち上がる単なるイベントとして終わらせないためにも、また NEW THIRD がめざす地域の人々への手綱渡しのためにも、食を共にしながら語らい、まちや地域についての話題が自然と打ち解けて話されるような場をつくりだしました。


テーブルには一人ひとりの席に、杉山香林さんのワークショップで立正佼成会メンバーが作成した花とナプキンが飾りつけられています。山帰来の実が添えられています。

シェフは静岡からお呼びしたbistro caravin の小野田正浩さんと、同じく静岡からSUMIBI FRENCH SINQ の保崎真吾さん。普段はそれぞれのお店をもつオーナーシェフですが、今回は特別コースとしてお二人の調理の技術を掛け合わせてここでしか食べられない料理をお出しいただきました。第一部でも黒毛和牛カレーと濃厚エビパスタをメニューとして出店いただいていたお二人。

ディナーセッションではまた別の料理の提供です。前菜は藁 かつお、太刀魚 ベーコン、パテ ド カンパーニュ、ズワイガニ かぶ。発酵マッシュルーム 旬野菜、オデオゴボウと続きます。このゴボウがたいへん好評でした。メインは牛 豚 鶏 1年熟成ジャガイモを炭火で焼き上げたもの。〆ラーメンに、デザートは栗フランボワーズ。すべてのお料理が手の込んだ、素材からこだわりの一品一品です。

 

ありあまる選択肢から何かを選択させられることに疲れ切って、余暇やスキマ時間に実りある生産性も作りえず、退屈にあえぐ現代人に没頭しうる“THIRD THING / 生活遊芸”を手渡すこと。

NEW THIRD “Cultural Festival”第1回となる「vol.0」は、その最初の一歩としてさまざまな課題をみつけつつも、たしかに求める方向性へと足を踏みだした場と時間が作り出されました。

 

酒井一途(アーカイブレポート、記録写真)